赤ちゃんが生まれたら、一番重要な親の役目として授乳があります。
母乳育児であれば、赤ちゃんの体重が成長曲線に沿っているかを確認する事が大切です。
しかし、母乳が思うように出なかったり出産後すぐに復職しなければいけないお母さんであれば、ミルク育児を選択する事も考えなくてはいけません。
この記事では、ミルクの中でも「温度」について詳しくご説明したいと思います。
ミルクの作り方
粉ミルクでの調乳方法は、厚生労働省のガイドラインに記載があります。
手順としては、
- 器具(哺乳瓶・乳首・計量スプーン等)を清掃し消毒する
- 石鹸と清浄な水で手指を洗う
- 安全な水を沸騰させる
- 70度以上のお湯を哺乳瓶に注ぐ
- 表示された量の粉ミルクを正確に量って加える
- 流水か、冷水または氷水の入った容器に入れて授乳に適した温度まで冷却する
- 哺乳瓶の外側を清潔な布で拭く
- 授乳温度を確認する
- 調乳後2時間以内に消費されなかった粉ミルクは、全て廃棄する
(PIF を使用した粉ミルクの調乳より引用)
となっています。
温度で気を付けなければいけないのが、
- 粉ミルクを溶かすお湯の温度
- 授乳時のミルクの温度
の2つです。
ミルクを調乳するお湯の温度は?
ミルクを作る時の温度はミルク缶にも記載がありますが、適正温度は70度以上となっています。
実は粉ミルク自体は、常温の水でも溶かす事は可能です。
では何故70度以上のお湯が必要かと言うと、「サカザキ菌」「サルモネラ菌」などの病原菌によって粉ミルクが汚染されている可能性があるからです。
これらの病原菌を、殺菌出来る温度が70度となっています。
サカザキ菌の健康被害
サルモネラ菌も怖いですが、それよりも怖いのがサカザキ菌です。
サカザキ菌による赤ちゃんの健康被害としては、
- 新生児敗血症
- 髄膜炎
- 壊死性腸炎
- 脳膿瘍
が世界各国で報告されています。
特に気を付けなければいけないのが、基礎疾患を持った乳幼児(早産児、低出生体重児など)です。
基礎疾患を持った赤ちゃんはサカザキ菌への感染リスクが高く、脳膿瘍、壊死性腸炎および敗血症を発症することがあります。
また重篤な場合には、水頭症や髄膜炎を併発し致死率も約 40~50%と高く、重度の神経学的後遺症が残ることが多いとされています。
(エンテロバクター・サカザキの概要より引用)
そのため、調乳には必ず70度以上のお湯を使うようにして下さい。
70度以上のお湯は火傷に注意!
始めて調乳する方で気を付けてほしいのが、「火傷」です。
特にガラス製の哺乳瓶を使っている方は、沸騰しているお湯を注ぐとものすごく熱くなるので注意しましょう。
新生児用の哺乳瓶は小さいので素手で持ってお湯を注ぎがちですが、大抵のお母さんは熱くて哺乳瓶を離してしまいます。
必ず清潔な布やガーゼを使って、哺乳瓶を持つようにして下さいね。
70度以上のお湯を作る方法
では、調乳に必要な70度以上のお湯をどのように作れば良いのでしょうか?
具体的な方法としては、
- 水道水を煮沸させる
- 電気ポットで温める
- ウォーターサーバーの温水を使う
の3つがあります。
1.水道水を煮沸させる
まずは水道水を煮沸する方法です。
水道水を鍋にはり、沸騰させるまで火を付けます。
沸騰したら鍋の蓋を開けた状態で10分程度放置しましょう。
こうする事で、水道水に含まれている塩素やトリハロメタンを除去する事が出来ます。
2.電気ポットで温める
電気ポットでも70度以上のお湯を簡単に作れます。
注意点としては通常の電気ポットではなく、「カルキ抜き」機能が搭載されている電気ポットを選ぶ事。
電気ポットの中で沸騰させ続ける事で、カルキを抜いて赤ちゃんのミルクに使えるようになります。
また70度保温機能がついていれば、調乳に最適な温度のお湯をキープする事が出来るので便利です。
3.ウォーターサーバーの温水を使う
3つ目はウォーターサーバーの温水を使う方法です。
ウォーターサーバーの温水の温度は80度~90度になっていて、水道水のように有害物質が含まれていません。
そのため煮沸の必要はなく、そのまま調乳に使用する事が出来ます。
赤ちゃんがお腹を空かせたらすぐに調乳出来るので、かなりおすすめの方法です。
調乳したミルクを人肌に冷ます方法
70度以上のお湯を注いだミルクは、赤ちゃんが飲める温度まで冷まさなければいけません。
ミルクを冷ます方法は、厚生労働省のガイドラインに沿って言うと「流水や氷水で哺乳瓶ごと冷ます」事になります。
しかし粉ミルクメーカーの見解では、「湯冷まし」を使って冷ますのも大丈夫とされています。
哺乳瓶に注ぐお湯の量を3分の2程度にして、粉ミルクをしっかり溶かしたら「湯冷まし」を注ぐと人肌の温度まで下げる事が出来ます。
湯冷ましに使える水には、
- 水道水を煮沸消毒して冷ましたもの
- 軟水のミネラルウォーター
- ウォーターサーバーの冷水
の3つがあります。
1.水道水を煮沸消毒して冷ましたもの
一番オーソドックスな方法が、水道水を煮沸消毒して常温に冷ます方法です。
煮沸消毒する事で、水道水に含まれている塩素を飛ばす事が出来ますし、口当たりもまろやかになります。
湯冷ましは毎日作る
多少手間ですが、湯冷ましは毎日作り直してください。
一度煮沸した水道水は塩素がなくなっているので、放置しておくと雑菌が繁殖してしまい赤ちゃんが病気になる事もあるので注意しましょう。
2.軟水のミネラルウォーター
また、ペットボトルに入っている軟水のミネラルウォーターを湯冷ましとして使う事も出来ます。
マグネシウムなどのミネラルが豊富な硬水は、赤ちゃんの腎臓に負担が大きいですが、軟水であれば大丈夫です。
特に新生児の間は、ミネラルが一切含まれていない「純水」を湯冷ましに使う方が安心です。
開封したボトルはその日中に使い切る
ただしペットボトルは、一度開封すると空気中の雑菌が水の中に混入します。
そのため24時間以内に使い切れなかった水は、廃棄するようにしましょう。
3.ウォーターサーバーの冷水
一番便利なのが、ウォーターサーバーの冷水を使う方法です。
ウォーターサーバー内部は無菌状態を保ってあるので、温水だけでなく冷水もそのまま調乳に使う事が出来ます。
温水は80度~90度で、冷水は3度~10度程度となっています。
そのためミルクを作る時には、温水を半分入れて粉ミルクを完全に溶かしたら、冷水を規定量まで入れれば40度程度のミルクが簡単に作れます。
授乳時のミルクの温度は人肌よりも少し熱め
育児初心者の方にとって難しいのが、授乳時のミルクの温度ではないでしょうか?
具体的には38度~40度くらいが赤ちゃんが飲みやすい温度とされています。
ミルクの温度の確かめ方
授乳時のミルクの温度を確かめるには、腕の内側にミルクを落とす方法があります。
数滴垂らして「少し熱いかな?」と感じるくらいが適温となります。
心配な時は温度計を使う
とは言っても、人によって感覚が変わってくるので、「本当にこの温度で大丈夫?」と心配になるお母さんも多いと思います。
また調乳に慣れていないお父さんがミルクを作る時には、「ちゃんと人肌になっているの?」と不安になります。
ミルク用の温度計も市販されていますが、哺乳瓶の中に毎回入れるのは衛生的にも心配ですよね?
そんな方には、赤外線温度計が便利!
哺乳瓶に温度計を入れなくて良いので衛生的ですし、0.5秒で表示されるので時間も短縮出来ます。
口コミを見ても、

赤ちゃんのミルク作りに使用しています。大体の温度が判り助かっています。
とあります。
これなら誰がミルクを作っても、安心ですよ。
ミルクが冷たい時はどうする?
調乳をしていると良くあるのが、「ミルクを冷たくしすぎた!」と言う事。
熱い分には冷ませば済みますが、冷たくなったミルクはどうすれば良いのでしょうか?
冷たいミルクは下痢になる
そもそも冷たすぎるミルクは、赤ちゃんの体に良くありません。
胃腸が未発達な新生児にとって、冷たいミルクは刺激が強すぎるのですぐに下痢になってしまいます。
夏場などは「冷たいミルクの方が赤ちゃんも喜びそう!」と思いますが、お腹を壊すのでやめましょうね。
ミルクを温める時は湯煎
では冷たくなったミルクは、廃棄するしかないかと言うとそうではありません。
確かに赤ちゃんが一度口を付けたミルクが冷えたら、雑菌が混入しているので廃棄するしかありません。
また授乳していないミルクでも、調乳してから2時間が経過したミルクも廃棄する必要があります。
しかし口をつけていないミルクであれば、鍋にお湯をはって湯煎で哺乳瓶ごとミルクを温めれば大丈夫です!
電子レンジはNG
「電子レンジなら簡単に温められるのでは?」と考える方もいらっしゃると思いますが、これは絶対にダメです!
と言うのも、電子レンジを使うと温度にムラ(ホットスポット)が出来るので、哺乳瓶の周りは適温でも飲んだ時に赤ちゃんが火傷をする危険性があります。
まとめ
ミルクの温度は調乳する際には70度以上のお湯を使い、サカザキ菌などの病原菌を殺菌します。
授乳時の温度は人肌よりも少し熱い程度が適温ですが、不安な方は赤外線温度計を使うのもおすすめです。
ミルクを冷ます時には流水か湯冷ましを使い、冷たいミルクを温めなおす時には湯煎を使います。
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